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おみくじの歴史 — 起源から「結ぶか持ち帰るか」まで
大吉が出れば胸の内で小さくガッツポーズ、凶が出れば「引き直そうかな」と箱を見つめる——おみくじほど、大人を素直に一喜一憂させる紙はそうありません。
この記事では、あの小さな紙の来歴をたどります。根拠にしたのは、神社本庁(全国の神社を包括する組織)のおみくじ解説、比叡山延暦寺の境内案内、百科事典、山口県周南市の公式サイトのうち、執筆時に実際にアクセスして内容を確認できたページだけです。お賽銭の話は前回の賽銭の意味と金額にまとめています。
はじまりは「神様に決めてもらう籤」
コトバンクに収められた事典の記述によると、古代には国の祭政(まつりごと)に関わる重要な事項や後継者を決める際、神様の意志を占うために籤(くじ)引きをすることがあり、これが現在のおみくじの起源とされています。つまり最初は、個人の運勢を占う遊びではなく、「人間には決めきれないことを神意に委ねる」ための真剣な道具でした。現在につながる籤引きは、日本では鎌倉時代の初期から行われるようになったと説明されています。
元三大師良源 — 「おみくじ発祥の地」とされるお堂
おみくじの原型として広く名前が挙がるのが、平安時代の天台宗の僧・良源(りょうげん)です。1月3日に亡くなったことから「元三大師(がんざんだいし)」の通称で親しまれたと伝わります。比叡山延暦寺の公式サイトは、横川(よかわ)エリアの元三大師堂(四季講堂)について、「現代行われるおみくじは、元三大師が考案したと言われており、元三大師堂はおみくじ発祥の地とされています」と案内しています。この系統のくじは「観音籤(かんのんくじ)」の名で紹介されることもあります。
「考案したと言われて」「とされて」——お寺自身の説明も、伝承としての言い回しです。千年も前のことですから断定はできません。それでも、おみくじの物語がこの僧に結びつけて語り継がれてきたことは確かです。
江戸時代に、今の形へ
神社本庁の公式サイトによると、おみくじが現在のような形になったのは江戸時代とされています。神社にはもともと、粥で作柄を占う粥占(かゆうら)や、亀の甲羅を焼いて占う亀卜(きぼく)など、神様のご神慮(お考え)を仰ぐ占いの文化が古くからあり、おみくじもその信仰の流れの上にあると説明されています。庶民が寺社参りを楽しむようになった時代に、神意を伺う籤は「運試しに一枚引く」身近な楽しみへと姿を変えていきました。
明治の女性たちが支えたおみくじ製造
現代のおみくじには、意外な作り手の歴史があります。山口県周南市の公式サイトによると、市内の二所山田神社の宮司は明治時代、女性の自立のための全国組織を設立し、明治39年(1906年)に機関誌『女子道』を発刊。その資金源としておみくじの製造を始めたのが「女子道社」です。全国の神社仏閣で見かけるおみくじの自動頒布機を考案したのも同社で、今も全国の社寺向けにおみくじを作り続けており、「おみくじ製造シェア日本一」と紹介されることもあります。あなたが引いたあの一枚も、女性の自立運動から生まれた一枚だったかもしれません。
吉凶の順番は「その神社の掲示」が正解
大吉・吉・中吉・小吉・末吉・凶。よく見かける並びの一例ですが、実は吉と中吉の上下や種類の数は社寺によって違い、半吉や平(たいら)といった珍しい札を出すところもあります。「中吉と吉はどっちが上?」に全国共通の正解はありません。授与所の掲示や説明書きがあれば、それがその社の正解です。参拝の基本作法で書いた「最終的な正解は目の前の神社の案内」という原則は、おみくじでもそのまま生きています。
凶が出ても、不幸の予告ではない
神社本庁の公式サイトは、おみくじは単に吉凶判断を目的として引くのではなく、書かれた内容をこれからの生活の指針としていくことが何より大切だと案内しています。引いたおみくじを読み返し、自分の行動に照らし合わせる。凶は「これから不幸になる」という予告ではなく、足元に気をつけなさいという戒めや励ましとして読む——そんな受け止め方が広く案内されているのは、この「指針」という考え方があるからです。
おみくじの本体は、大吉・凶の一字ではなく、そこに添えられた和歌や言葉のほうです。運勢の欄しか見ずに結んで帰るのは、手紙の宛名だけ読んで捨てるようなもの。少しもったいない話です。
結ぶか、持ち帰るか — どちらでも大丈夫
神社本庁の公式サイトによると、引いたおみくじを境内の結び所に結んで帰る習わしもありますが、持ち帰っても差し支えないとされています。どちらでも大丈夫。持ち帰って、迷ったときに読み返すのも立派な向き合い方です。
結んで帰る場合は、ひとつだけ気をつけたいことがあります。木の枝に直接結ぶと枝を傷めるため、多くの神社では専用の結び所が設けられています。初詣の大阪天満宮のような人出の多い神社ほど案内は整っていますから、指定の場所に、ほどけないようそっと結びましょう。
吉凶の一字より、あなたへの言葉を
最後にもう一度。おみくじは、神意を伺う籤から始まり、形を変えながら受け継がれてきた長い歴史を持つ文化です。大吉でも凶でも、その紙があなたに手渡しているのは運命の判決ではなく、これからの過ごし方へのひと言。次に引いたときは、吉凶の欄の下にある言葉まで、ゆっくり読んでみてください。
おみくじを引きに、近くの神社へ。→ 福跡マップで近くの神社を探す
参考・出典
- https://www.jinjahoncho.or.jp/omairi/omikuji/
- https://www.hieizan.or.jp/keidai/yokawa
- https://kotobank.jp/word/%E3%81%8A%E3%81%BF%E3%81%8F%E3%81%98-41238
- https://www.city.shunan.lg.jp/site/kanko/2743.html