神社の教養
弁天さまが水辺にいるのは、もとが川の神だから — 四天王寺 亀遊嶋辯天堂
弁天さまは、たいてい水のそばにいます。
江の島も、竹生島も、井の頭も、不忍池も。なぜか島か池か川のほとりにいる。
理由は、四天王寺の公式サイトにはっきり書いてありました。
もとはインドの、河の神だった
辯才天は、インドにおいて河の神とされたことから、水辺に祀られます
四天王寺の公式サイトによる、亀遊嶋辯天堂(きゆうじまべんてんどう)の説明です。
弁才天のもとはインドの女神サラスヴァティー。サラスヴァティーは、そのまま川の名前でもあります。川そのものが神だった。
だから日本に来ても、水のあるところに祀られる。
千年以上たっても、出身地の性質が抜けていない。 神仏の来歴をたどると、こういうことがよく起こります。
この弁天さまは、琵琶を持っていない
そしてこのお堂の像には、もう一つ面白いところがあります。
公式サイトによれば、ここに祀られる辯才天は八臂(はっぴ)——腕が8本あり、弓・宝珠・鑰(カギ)などを持っています。
弁天さまと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、琵琶を抱えた二本腕の姿でしょう。あれは音楽・芸能の神としての弁天です。
いっぽう八臂の弁才天は、武器も持つ。仏教経典に出てくる、より古い形です。
なかでも私が気になったのが鑰(かぎ)でした。
鍵です。何の鍵かというと、蔵の鍵。開ければ財が出てくる、という意味です。
だから公式の説明も、こう続きます。
「智恵弁才、福徳円満、子孫繁栄」に霊験があるとされます
弁才の「才」、福徳の「福」、そして子孫。芸だけの神ではありません。
池に遊ぶ、亀の甲
お堂の名前も、由来がはっきりしています。
公式サイトによれば、池の中央に島があり、辯才天を祀るお堂が建っている。その姿が、池に遊ぶ亀の甲に似ていることから「亀遊嶋」と名付けられました。
実際、亀の池には本物の亀がたくさんいます。甲羅を干している亀を眺めながら、亀の形をした島を見ることになる。
見立てが、そのまま名前になった。 こういう素直な命名は、かえって長く残ります。
池の上には、舞台がある
同じ亀の池には、もう一つ有名なものが架かっています。
公式サイトによれば、石舞台は亀の池の上に架かる石橋に組まれた舞台で、毎年4月22日、聖徳太子を偲ぶ聖霊会(しょうりょうえ)舞楽大法要の際に、古来の作法にのっとって舞楽が舞われます。
この石舞台は重要文化財です(公式サイトの修理工事のお知らせに「重要文化財 四天王寺石舞台」と記されています)。そこで舞われる天王寺舞楽は、重要無形民俗文化財。建物も、その上で舞われる芸能も、どちらも指定を受けています。
池の上で舞う。
水の上に舞台を作るのは、ただの演出ではありません。そこが特別な場だという合図です。弁天の島も、舞楽の舞台も、水に囲まれることで日常から切り離されている。
四天王寺の亀の池は、その一つの池だけで信仰の装置が二つ乗っている場所です。
参拝の日を選ぶなら
日にちが決まっている行事は、覚えておくと得です。
| 日 | 何があるか |
|---|---|
| 毎月21日 | 例月祭・辯才天法要/露店 |
| 毎月22日 | 露店(21日より少なめ) |
| 10月初旬 | 秋の大祭(特別法要) |
| 4月22日 | 石舞台で聖霊会舞楽大法要 |
| 春秋彼岸・お盆 | 露店 |
そして21日には、もう一つあります。
四天王寺の公式サイトによれば、毎月21日の「大師会(だいしえ)」と22日の「太子会(たいしえ)」は四天王寺の縁日です。そして公式FAQによれば、この21日・22日と春秋彼岸・お盆には、境内に露店が出ます。時間は8時頃から16時頃。
店舗数は——500店舗ほど。
私はこの数字を読んで、二度見しました。骨董品・衣類・食べ物が多いそうです。露店が出はじめたのは江戸時代以降、とも書かれています。
つまり21日は、弁才天法要と500の露店が同じ日に立つ。
静かにお参りしたい方は、この日を外してください。逆に、賑わいごと味わいたい方は21日一択です(22日とお盆は店舗数がかなり少ない、と公式は但し書きを付けています)。
四天王寺は、水で見ると面白い
このサイトで四天王寺を扱うのは二本目です。
一本目は亀井堂。経木を亀井の水に沈めると、自然に浮かんでくるという、あのお堂でした。
亀井堂の亀。亀遊嶋の亀。そして池の亀。
四天王寺には亀が三重に効いているわけですが、共通しているのは全部水です。
大阪の水の福跡でいえば、清水寺の玉出の滝も、法善寺の水掛不動も同じ上町台地の縁にあります。台地の際から水が湧き、そこに信仰が生まれた。
この土地では、水の出るところが福の出るところでした。
場所とデータは四天王寺 亀遊嶋辯天堂のページにまとめています。あわせて亀井堂もどうぞ。同じ境内です。
---
あなたの町の福の気配を測ってみる。→ 福跡マップで見てみる